私は将来なりたい職業を小学校3年生で決めて、実際その職業につきました。
でも、実際になってみると違和感がありました。なぜなら、将来像を全くの憧れで決めていたので、実際その職業の人が毎日どんな『アタマのカラダの作業』をしているのか、分かっていなかったからです。
「憧れだけで目指しているんじゃないか」といわれることに反発もしました。でも、実際そうだったのです。大学の同期で業界2代目の子たちは、その業界の毎日についてしっかり分かっていました。
その経験から自分の子供だけではなく、接点がある子には『職業』ではなく、『毎日なにをして過ごして行きたいか』について考えて欲しいと話しています。
毎日 人と話したい
毎日 ものをつくりたい
毎日 移動したい
なにになる より 何をしたい の方がよりイメージできると思っています
今回3年生の娘が「『美容師』になりたい」と話してくれたので、美容師が毎日何をして過ごしているのか少しでも感じられたら・・・と思って美容院に連れて行きました。
ちょきちょき屋さんになる
おかあさん、私、ちょきちょき屋さんになる
たしかに、髪をさわるのが大好きで、小学校入学のころには、自分で色んな髪型を作って研究していたM2
三つ編みをカチューシャっぽくセットしていた技術には尊敬の念すら感じました。そして、保育園に通う下の子たちの髪も結んでもらったりしています。
自分の経験から、『なりたい職業』ではなく
『毎日したい作業、苦にならない楽しいこと』を仕事にしてほしいと考えて子供を育てています。
少しでも、美容師の毎日に触れて、「こんな生活をするのかな?」と感じてほしくて、おしゃれな美容院で働くの友人に「子供を連れてってもいい?」と聞くと、忙しいから難しいとのこと。
そこで、もう少し家庭的な美容院に私ひとりで行って、髪を切ってもらっている間に「つぎ、子供連れてきてもいいですか?」と聞いて「ぜんぜん大丈夫ですよ~」と了解をもらいました。
M2が最初に言っていた「ちょきちょき屋さん」という呼び方も、気がつけばもう『美容師』になっていました。私が獣医になろうと決めたのと同じ年齢になっていました。
美容師になるまでの過程と現状
子供同伴を了承してくださった美容院に行き、「この子、将来、美容師になりたいと言っているのでお仕事されてるところを見せてやってもいいですか?」とお願いしたところ、美容師さんが施術しながら笑顔で説明までしてくれました。
小学校3年生から『獣医さんになる』と決めて進んできた私は、まったく接することのなかった『美容師』へのルート。興味津々で聞かせていただきました。
一人前の美容師になるまでの過程
18歳 高卒で、2年間の専門学校入学 学費170~300万
(中卒からでも可能のようですが。)
20歳 専門学校を卒業して、
3年間程度 アシスタント(カットなし)として美容院へ勤める
閉店後に技術を磨くために店で練習させてもらったり、
勉強会をしたりするのが一般的
月収13-17万円(アルバイトと掛け持ちしている人もいる)
23歳 3年間程度 Jr.スタイリストカットを任せてもらえる
月収16-23万円 指名料がつかず収入は上がらない
26歳 3年程度 スタイリストとして全ての施術に対応できるように修行していく。
月収20-30万円
29歳 どんなお客様が来ても対応できるくらいの技術が身につく
独立する人もでてくる
トップスタイリストになれば月収50万以上の人もいる
美容師の現状
最近は美容師になろうとする人が少なくなってきているそうです。
理由は修行期間が長くつらいから。
たしかにアルバイトを掛け持ちしながら修行していくのはなかなか大変そうです。
男性は独立開業する人も多いが
女性一人での独立は少ない(旦那さんが開業している夫婦はかなり多い)
女性は結婚・出産などを機にやめる人も多く、その後、「ヘッド専門セラピスト」「ネイリスト」「ファッション関係」「レジうち」などに転職する人もいるとのこと
動物病院と違って初期投資と経費は少なく見える・・・
でも、逆に独立のハードルが低くてライバルが多い。
我が家からこの美容院にくる間にも、余裕で10軒は美容院がある。
お店開いて、ほとんどが3年以内に”破産”するって言われてますよ~
10軒の美容院を乗り越えてウチにきてくださって、ほんとにありがとうございます!
手が荒れ
立ち仕事で腰が痛くなるのが しんどいところ
私の友達は、久々に会ったら手に髪の毛が刺さっていました。人間の髪の毛ってすごいパワーですね(汗)
ちなみに私は、動物の毛が手に刺さったことはありません。(踏まれたり、かまれたり、注射器がささったりすることはありますが・・・)
「美容師が『似合う』と思っても、お客さんが気に入らないと言ったら意味がない。お客さんが喜んでくれるようなスタイルにすることが一番大事だよ」と娘に教えてくださいました。
女性の働き方モデル
先日、会社組織でのフルタイムワーママ友達が「ちょっと!すごい理想的な働き方をみちゃったんだよ~」と半泣き?で教えてくれたのが、自宅に小さな美容室を開業しているママの話。
長年、その友人の担当をしていた美容師さんが、妊娠出産を機に開業したようでした。
店の奥に赤ちゃんと小さな子がちょろちょろしている中で、その美容師さんにカットしてもらい、「子供が小さいうちは、マイペースでやっていこうと思ってるんです」と笑顔で教えてもらったそう。
自分の現状と比較して「ガーーーーン」とショックを受けて帰ってきていました。
組織へフルタイムで勤めるママの生活の軸は、時短があったとしても、仕事主体で構成されます。
子どもがいても仕事にできるだけ影響が出ないように、家庭生活をまわしていく
ここに、つねに焦点を当てて暮らしています。そうしないと毎日乗り切れません。保育園からの発熱の呼び出し電話におびえながら、組織の中でも弱者であること、迷惑をかけていることを痛感します。
こどもが病気になって心配<子供が病気になって仕事に穴があくのが心配
こんな心境になることが度々ありました。そして自己嫌悪。
それに対して独立開業している、その美容師さんの生活の軸は、家庭主体だそうでした。
子供が小さい時は家庭生活が軸。無理せずに、でも、全くゼロにせず経験がつみあがる仕事を続ける
私の理想の生活スタイルができていました・・・
なぜ、私にその発想の選択肢がなかったんでしょうか。
進路を決めた当時は、「女の子でも頭がよければ男の子と平等」「体力だけは付けておかなければ体がもたない」くらいしか考えておらず、子供をもって仕事をすることへの臨場感がありませんでした。
そして、子持ちの女性がマイペースで開業できる職と、そうでない職があることを知りませんでした。大学に入って、動物病院でアルバイトし始めて「あれ?私、院長みたいな生活ずっと続けていけるかな?」と初めて感じたのを覚えています。
そして、私のまわりで子持ちで女性一人で開業した人はいません。
「本当に出産直前まで夜までオペしてた」というようなスゴイ女性が伝説のようにチラホラ語り継がれているくらいです。語り継がれるくらい珍しい。
女性の社会進出の幅を狭めると言われるかもしれませんが、
子供を産んだ上で、自分の仕事も積み上げていける業種というものが世の中にあること、難しい業種もあること。これを知らずに将来を決める女の子が多いのではないでしょうか。
女性が核家族で子供をもって、単純作業でない仕事をしていくと、どういう毎日を送ることになるか。その毎日を送っていくには、どういうサポートや働き方、余裕が必要か。
この理解なしに、体当たりで飛び込んでここまで泳いできました。結構がんばりました(笑)
上の世代は、『女性だからと言って、なれない職業はない!』という世界を切り開いてくれました
私たちの世代は、『スゴイ人じゃない、ふつうの女性でも社会で責任ある仕事ができる』という世界を切り開きました(たぶん)
次の世代の娘たちには
『子供をもって、子供が小さいうちは、子供と自分の体調を軸にしながら、仕事は途絶えさせずにマイペースで続けて、手が離れてきたら仕事の比重を多くしていく』こんなライフプランが普通になる世界を切り開いて欲しいです。そのためにサポートしていこうと思っています。
なりたい職業や目標はこれからどんどん変わっていい。
でも、いつか社会に出て、自分が働いて、誰かのためになっている自分を今の毎日の延長線上に身近に感じてほしい。
これからも、子供が『なってみたいな』『やってみたいな』と話してくれた職業の職業体験や・見学ができるところ、私たちが思いもよらない仕事の見学を積極的に探して行ってみます。
↓M2の視点で、美容院見学でココロに残ったことを別記事で紹介しています。予想外すぎました・・・(笑)